「物流企業(物流会社)」とは、「保管」「流通加工」「荷役」「包装」「輸送」「情報管理」に対応できる会社のことです。
対して「運送会社」は「輸送」のみに対応している会社を言います。
物流企業(物流会社)と運送会社の違い
「モノを運ぶ」という一点において、物流企業も運送会社も変わりが無いように思えます。
一般的には「運送・輸送」のイメージが強い物流ですが、在庫を「保管」し、商品を「加工」し、適切に「包装」し、入出庫や積み降ろしの「荷役」を経て、一般的なイメージである「運送・輸送」する、さらに商品の状態などをリアルタイムに把握する「情報管理」に至るまでを指して
モノの流れ=物流と呼びます。
つまり、それら「物流」に関わる業務をトータルに請け負うことができる会社が「物流企業」であり、「輸送」に特化しているのが「運送会社」ということです。
物流とは?
では、改めて「物流企業」の担う業務について掘り下げます。
前述のように「物流」とは、以下の6つの業務から成り立っています。
- 保管 … 商品や原料を保管する
- 流通加工 … 商品を加工する
- 荷役 … 商品の積卸・入出庫・ピッキング
- 包装 … 商品の梱包・包装
- 輸送 … 商品を運ぶ
- 情報管理 … 商品の情報を管理する
① 保管(ほかん)
読んで字のごとく、商品の「保管」をします。
メーカーの工場などから輸送の業務を受託し倉庫に保管します。
出荷したいタイミングでさらに輸送を受託します。
ただ単に「保管」するだけではなく「輸送時期の調整」と「商品の在庫管理」も物流企業の「保管」が持つ大切な役割です。
なお、「保管」は物流会社ではなく、倉庫業の会社に依頼する場合もあります。
倉庫業の会社に依頼した場合、入出庫時の「輸送」は、別の運送会社に依頼することになりますので、輸送から保管までまとめて引き受けられる物流会社に依頼する方が、コスト面・効率面の両方においてメリットがあるケースが多いでしょう。
② 流通加工(りゅうつうかこう)
「流通加工」とは、流通の過程で商品に付加価値をつけたり、流通の効率を向上させたり、消費者の利便性を高めたりするために行われる、加工作業全般を指します。
検品(動作確認・傷や汚れのチェックなど)や、セット商品の種類や量を揃えてまとめたりします。細かいところですとタグ付けやシール貼りなども、流通加工の業務です。
物流会社に依頼せずに、工場などで流通加工をしようとすると、費用・敷地・施設・人員が余分に必要になるため、これらのリソースは製造に注ぎ、流通加工を物流会社に依頼する方が生産性が高く、コスト面も有利になるので、輸送・保管に合わせ流通加工にも対応できる物流会社の需要が高まっています。
③ 荷役(にやく)
荷物の積み下ろし、倉庫への入出庫、仕分け、発注に応じて必要な品物を集めるピッキングなどが、「荷役」です。
この業務は物流会社以外にも、運送会社や倉庫業者が行うことも多いです。
④ 包装(ほうそう)
商品を必要に応じて「包装・梱包」する業務です。
包装(packaging)とは
「物品の輸送、保管などにあたって価値及び状態を保護するために適切な材料、容器などを物品に施す技術および施した状態」
日本工業規格 (JIS)
広義に「包装」という言葉が使われ、装飾的な要素を含む商品の一部としての包装を「商業包装」と言い、物品の輸送や保管の為の包装を「工業包装」と言います。
工業包装は「梱包」「輸送包装」と呼ぶこともあり、段ボールや発泡スチロール、紐などを使った丈夫な荷造りのことを言います。
商品がなんらかの方法で包装されているのは、当たり前に感じるかもしれませんが、包装には重要な意味があります。
・商品の破損や品質劣化の防止
振動・落下・温度・湿度などによる、破損・劣化を防止する役目
・物流効率の向上
バラバラのものを1つの箱にまとめたり、ロットナンバーを貼り付けたり
台車やパレットに積みやすくしたりすることで、輸送時の効率を向上させることができます。
これらの作業も工場など製造業の現場で行うとなると、費用・敷地・施設・人員が必要になるため、物流会社に依頼することでコストカットと生産性の向上を図るケースが増えています。
⑤ 輸送(ゆそう)
一般的に物流と言えばこれをイメージする方が多いでしょう。
様々な手段でモノを運ぶ役目です。
運ぶ手段によって、輸送は大きく下の3種類に分けられます。
・陸運 → 鉄道やトラックで運ぶ
・空運 → 飛行機で運ぶ
・海運 → 船で運ぶ
輸送機関が鉄道やトラックなど陸上の貨車での輸送を陸運、航空機での輸送を空運、船舶での輸送を海運または水運と呼ぶ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%8B%E8%BC%B8%E6%A5%AD
運送=陸運?
3つに分かれると言いましたが「運送」と言えば「陸運」のイメージが強いと思います。
これは、輸送全体のうち、陸運の占める割合が、トンベース(運んだ荷物の重さの合計)だと約9割、トンキロベース(運んだ荷物の重さ×距離の合計)でも約5割と、非常に大きいことが理由として挙げられます
トンキロ – 貨物のトン数とその貨物を輸送した距離(km単位)を掛け合わせたもの。1トンの貨物を1km輸送した輸送量が1トンキロ。
例:5トンの貨物を30km輸送した場合は5トン×30km=150トンキロである。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BC%B8%E9%80%81%E9%87%8F%E3%81%AE%E5%8D%98%E4%BD%8D
さらに飛行機や船でモノを運んでいるシーンを目にすることが少ないこともあって、運送≒陸運という印象になるのも頷けるかと思います。
事実「運送業」「運送会社」と言えばほぼ陸運、トラックでモノを運ぶ会社です。
また、トンキロベースですと陸運の割合が少なくなるのは、海運や空運が、重さは陸運より少ないものの、より長い距離の運送が多いということの現れです。
⑥情報管理(じょうほうかんり)
物流の中にある様々な情報を管理する業務です。
情報管理を行うことによって、ここまでで説明した5つの業務を、より効率的に遂行することができるようになります。
倉庫管理システム
倉庫管理システムを利用することで、在庫管理、保管場所の管理、ロットの管理、入出荷管理など、倉庫内の業務をリアルタイムで把握し、効率的な商品管理を実現することが出来ます。
運行管理システム
運行管理システムは、最適かつ効率的な運行計画・配車管理をします。
また、各車両に専用の車載器を搭載し、走行距離・走行時間・加減速・旋回など、乗務員ごとの運転内容を把握することで、より安全な運転の指導や、交通事故・商品事故の防止に役立てることができます。
さらに、燃費の向上やCO2排出量の抑制などにも役立ちます。
輸配送管理システム(TMS)
輸配送管理システムは、配車・配送計画の最適化を行います。
効率的な輸配送計画は、積載率および実車率の向上につながり、無駄なコストをカットすることができます。これは輸送する側に利益を生むのはもちろんですが、輸送の発注側にとっても、物流コストの削減につながります。
積載率は、トラックの最大積載量に対して実際に積載した量の割合で、共同配送などにより向上させることができます。
https://www.nittsu.co.jp/support/words/ha/haisokoritsu.html
実車率は、全走行距離に対し実際に貨物を載せた距離の割合で、この反対に空車距離の占める割合のことを空車率といいます。帰り荷を確保することで向上させることができます。
https://www.nittsu.co.jp/support/words/ha/haisokoritsu.html
また、配車管理は個人の経験や技量に依存する部分が多く、非常に属人的な業務です。しかしシステム化を進めることで業務の平準化が図れ、これも結果として輸送する側と輸送の発注側、双方に利益をもたらすことができます。