取扱(とりあつかい)・水屋・庸車の意味
貨物利用運送事業
物流企業における「取扱(とりあつかい)」とは、自社が所有・運営する車両を使用するのではなく、他の事業者が提供する運送サービスを活用して貨物を輸送する、貨物利用運送事業のことを指します。
貨物利用運送事業の法律が2003年に「貨物利用運送事業法」の名称に改定される前は「貨物運送取扱事業法」という名称でした。
水屋運送
「取扱(とりあつかい)」と同じ意味の通称で「水屋(みずや)」と呼ぶ方もいます。
「水屋」の由来 物流辞典によると「昔、水を売り歩く商人(水屋)が飛脚などへの荷物の取次を行っていたことが由来」とされています。
庸車
貨物利用運送事業で利用する他の事業者の事を「庸車(ようしゃ)」と呼びます。
庸車について 傭車(庸車)という言葉自体は、「傭兵」と「車」が組み合わさってつくられた造語とされています。 漢字表記は「庸車」と「傭車」の2つがあり、どちらも特に違いはありません。
物流コーディネーター
取扱業務は、荷物を送りたい荷主企業と、その荷物を運ぶのにピッタリな運送会社をマッチングさせる仕事です。物流を調整するという事から、取扱業務を行うスタッフを「物流コーディネーター」と表現する企業もあります。
貨物利用運送事業のメリット
開業のハードルが低い
貨物利用運送事業は車輛の保有や従業員の雇用が必要ないため、比較的用意に開業できる事業です。条件を満たせば法人でも個人事業主でも開業できます。
また、既に実運送を行っている会社の場合は、一般貨物運送事業にぶら下がる形の「貨物自動車利用運送」の許可(通称ぶら下がり許可)を得る事で利用運送を行う事もできます。この場合は一般貨物運送事業者が、事業計画の中にある”利用運送を行うか”という項目を「する」に変更するための、事業計画変更認可を受けることで、貨物自動車利用運送を行うことができるようになります。
経費が少ない
貨物利用運送は、自社の車輛を持たない為、自動車税、自動車重量税、任意保険料、修繕費、燃料代などの経費がかかりません。
オフィスの家賃や光熱費、電話代などの通信費、従業員がいる場合は給与など、比較的少ない経費で事業を行うことが出来ます。
テレワークも可能
貨物利用運送は、主に電話を使ったビジネスとなります。配送業者の手配を荷主から受ける際や配送先の探索において、ほぼ電話が中心的な役割を果たします。
また、通常のトラック運送業のようにドライバーの出庫や帰庫を詳細に管理する必要がないため、事務所に拘束されずに業務を遂行できます。
つまり、電話さえ出来ればどこにいても仕事が可能な事業です。
自社の名前で色々なニーズに応えられる
貨物利用運送は、自社で対応不可能な荷物でも、他社の最適な輸送手段を利用することで効率的な輸送サービスを可能とします。
お客様の中には、冷凍車で冷凍食品を運びたい、クレーンで上から積んで運びたい、かご車に乗せた商品を運びたい…など実に様々なニーズがあります。
自社サービスを超えて多くのお客様のニーズに応えられる事で信頼と実績を勝ち取ることが出来るのです。
貨物利用運送のデメリット
営業努力が必要
貨物利用運送は荷主から請け負った仕事(売上)を協力会社に外注し(外注費)、その差額を利益とします。
上記の例では運賃10万円の仕事に対して利益は5千円となります。会社として利益を出していくには依頼の数をこなす必要があり、多くの荷主と協力会社との協力関係・荷物情報を必要とします。
輸送品質の維持が難しい
貨物利用運送は他社の運送サービスを利用して荷物を運ぶため、自社の車輛やドライバーの雇用の必要が無いですが、裏返せばそれはドライバーの教育や緊急対応が難しいという事でもあります。
事故等を起こして商品が破損してしまった際、基本的にはその荷物を運んだ庸車が責任を負いますが、手配した責任を問われることもあります。外注先が起こした事故なので自社は関係ないという対応は当然できません。
まとめ
物流用語としての「取扱(とりあつかい)」「水屋」とは貨物利用運送事業を意味します。
貨物利用運送事業は、他の事業者の車輛や運送サービスを活用して貨物を輸送するビジネスです。
「傭車(庸車)」とは貨物利用運送事業で利用する他社の運送会社の事を指します。
貨物利用運送事業は開業のハードルが低く、経費が比較的少ないため、多くの事業者にとって魅力的な選択肢となっています。事業の主なメリットとして、以下の点が挙げられます:
メリット:
- 低い開業ハードル: 車輛の所有や従業員の雇用が不要で、法人や個人事業主が比較的簡単に開業できます。
- 経費の削減: 自動車関連の経費(自動車税、自動車重量税、保険料、燃料代など)がかからず、オフィスの家賃や通信費も比較的低いです。
- テレワークも可能: 電話を主要なコミュニケーション手段とするため、どこからでも業務を遂行できます。
- 多様なニーズへの対応: 他社の運送サービスを活用することで、多様な荷物に対応できます。これにより、顧客のさまざまな要望に応えられます。
デメリット:
- 営業努力が必要: 依頼の数を増やす必要があるため、営業活動が必要です。
- 輸送品質の維持が難しい: 輸送品質の管理が難しく、事故や製品の破損に対処する必要があります。
以上が、貨物利用運送事業の主な特徴とその利点・課題のまとめです。